『参加したこどもたちが、安全に、最後まで楽しめる大会にする』
こちらは、日本将棋連盟東京都支部連合会が掲げた大会の基本方針です。
2025年5月6日(火・祝)、その東京都支部連合会が主催する第24回全国小学生倉敷王将戦/東京大会が開催されました。
2年前に引き続き今回も東京大会を取材し、どのように『最後まで楽しめる大会』にしているのかを見て参りました。
その模様を記事にして報告致します。
全国小学生倉敷王将戦/東京都大会の模様

- 長男(大学2年)と次男(高校1年)を持つ親将(親将歴14年)
- 日本将棋連盟茨城常南支部役員 広報部長
- 千駄ヶ谷連盟道場初段、将棋ウォーズ二段
- 2022年11月から「こども将棋情報室」のサイトを運営
本記事で掲載している顔写真は基本モザイク処理をしていますが、一部保護者の方に許可をいただいた写真に限り未処理でそのまま掲載しています。
会場入りから受付まで
会場:ティアラこうとう

2025年5月6日(火・祝)、当日の天候はあいにくの雨模様。
朝から雨が降っており、天気予報でも一日雨とのことでした。
東京都支部連合会スタッフの集合は8時50分。
私は電車を乗り継ぎ、会場最寄の住吉駅に着いたのは8時30分でした。

住吉駅は東京メトロ半蔵門線と都営新宿線(共に地下鉄)が乗り入れており、多くの方が電車で来られたように思います。
地下鉄の駅を出るとやはり雨。

あにくにの雨
ここから会場の「ティアラこうとう」までは歩いて5分程度。
あいにくの雨模様ですが、駅から比較的近いのでそこまで苦ではありません。


早めに現地に到着しましたが、東京都連のスタッフさんが数名、また大会の取材に来られたマイナビ出版社の方もすでに現地に到着されておりました。
8時40分にティアラこうとう内に入場。
会場は地下1Fの大会議室で行われます。
会場設営

会場に入る前に入口前で簡単なスタッフミーティングが行われました。
東京都支部連合会のスタッフさん13名が集まりました。

9時に会場内に入場。
会場内はすでに机・椅子が設置された状態でした。
スタッフさんに聞くと、「ティアラこうとう」の大きな利点は、すでに机・椅子が設置されており、準備・後片付けの負担が少ないことだそうです。
東京都大会の参加者は200人弱。
机・椅子の持ち運びはそこそこ体力がいるので、その作業がないのは大きいです。

すでに机と椅子が設置されていた
会場に入ると、手分けして将棋大会の会場設営です。
盤駒や対局時計を設置していきます。


対局時計は高学年の部のみ使用します。
各支部より手分けして計64台の時計を持ち込みました。
会場入り口には、スケジュール表も掲示されていました。


スケジュールが掲示されていると保護者も動きやすいですね。
本大会は事前にスタッフ用に運営マニュアルが配布されており、スケジュール、役割分担表、持ちものリストが掲載されておりました。
これによって10数名のスタッフが迷いなく仕事をこなせていたと思います。


事前準備が徹底されている
ものの15分ほどで将棋会場が出来上がりました。


高学年の部には対局時計を設置
会場には東京都支部連合会の旗も飾られていました。


また会場前方には賞品のトロフィーも飾られていました。
このトロフィーを手にするのは誰か、テンションが上がりますね。


これを手にする者が倉敷に行ける


マイナビさんから寄贈いただいた
東京都大会は選手が対局する会場の他に保護者控室も確保されていました。
保護者はここでゆっくり待機することができます。




100席以上の椅子が設置



保護者の方々は控室でゆっくり休みながら待つことができますね。
9時10分頃から会場外のロビーでは選手や保護者がぞくぞくと来場され、受付を待たれています。


受付開始~開会式
受付スタッフも準備ができ、9時20分頃から受付がスタートしました。
参加人数が多いので、高学年と低学年と受付場所が分かれます。




東京都大会は事前申し込み制です。
よって、参加者は受付で名前を伝え、参加費1500円を支払えば受付が完了となります。


受付を終えた選手、親御さんが続々と会場入りします。




会場に入った子供達は各々の時間を過ごします。
友達同士や親御さんと練習将棋を指している子が多かったですが、中には棋書を読んで本番に備えている子もいます。






10時に受付が終了しました。
本日の参加者は下記の通りです。
- 高学年の部:112名(88名)
- 低学年の部:66名(62名) 合計178名(150名)
東京都大会では178名の参加は過去最多とのこと。
全国でも東京都や千葉県は参加人数が多く、各教室の先生・スタッフ方々の普及活動の賜物かと思われます。
会場外では、予選1回戦の抽選を行っていました。
抽選は、選手に配布される対局票を使って行われました。
対局票は事前申し込みのために、参加者全員分があらかじめ作成されています。


事前に作成されている



大会当日に名前などの記入をする手間が省けるので、事前に準備されているのはいいですね。


対局票を裏返し、ランダムで集めていく
会場内では開会式が始まりました。
開会式は10分ほどでした。
北会長のご挨拶から始まり、浦井さんがルールの説明を行います。


ルール説明を行う浦井さん
東京都大会のルールは下記の通りです。
- 高学年の部、低学年の部に分かれ、それぞれ都代表者2名を決める
- 高学年の部:対局時計を使用(持ち時間10分、切れたら1手30秒未満)
- 低学年の部:時間制限なし。ただし、進行によっては対局時計が入る。
- 予選対局を2~3局行い、2勝通過、2敗失格
- 予選対局通過者:午後の決勝トーナメント
- 予選対局失格者:午後の交流戦(交流戦では4勝者先着50名にお菓子の賞品あり)
- 決勝トーナメント:負ければ敗退。敗退後に交流戦に参加可能。
予選
開会式が終了すると、保護者の方々は会場外へ退出となります。
高学年と低学年に分けられ、先ほどの抽選で決まった相手と指定された対局席に着席していきます。
高学年の部は100人以上いるので、なかなか席に着かすのも大変です。




参加者全員が対局席に着席し、10時15分に一斉に午前の予選が始まりました。



滞りなく、スムーズに大会が進行していきます。
















低学年の部は対局時計を使いませんが、一手一手の指し手が早く、5分もすると対局が終了して結果を報告に来る子供達が出てきます。
対局結果は、対戦相手と受付に報告に行きます。
受付では、それぞれの対局票に勝ち、負けを記入し、2回戦は勝ち同士・負け同士を当てていきます。


この対局票は交流戦にも使用する


低学年は進行が早い
高学年の部は対局時計を使用します。
持ち時間は10分、切れたら一手30秒未満で指します。
高学年の部も10分もしない内に勝敗が決まり、ぽつぽつ報告に来る子供達が出てきました。


低学年同様に2回戦は提出順に勝ち同士・負け同士を当てていきます。
この対戦相手の決め方はテーブルマークこども大会の予選方式と同じですね。
15分ほどすると高学年の部も低学年の部も1回戦の対局が終わり、たくさんの子供達が勝敗の報告にやってきます。
受付も忙しくなります。
選手の待ち時間を短縮するためにも、どんどん2回戦の相手を決めて次の対局を進めていきます。


15分もすると報告に来る選手がたくさん
さらに10分もすると、2連勝者で予選を突破する選手が出てきます。
突破した選手にはその場でクジを引いてもらい、決勝トーナメントの位置が決められます。


東京都大会の代表枠は高学年の部・低学年の部それぞれ2枠。
決勝トーナメント表を二つに分けて、代表権を獲得する優勝者を2名決める方式です。
低学年の参加者には漢字が読めない子もいることに配慮して、低学年の部のトーナメント表はひらがなで名前を記入していました。


低学年の部はスタッフがひらがなで記入
高学年の部も同様に2勝者が抽選を行い、トーナメント表の位置が決められます。
こちらは選手本人がトーナメント表に名前を書いていました。




高学年の部は選手本人が記入する
低学年の部は11時30分に予選の3対局が終了しました。
半分の33名が午後の決勝トーナメントに進出します。
高学年の部も11時40分に予選が終了しました。
56名が予選を突破し、決勝トーナメントに進みます。
2勝通過2敗失格の予選ですが、高学年の部は強豪が順当に勝ち進んだ印象でした。
低学年の部は、複数の親将さんと会話させていただいたのですが、連盟道場で初段以上の子が何人かいるようで、全国でも十分活躍できるような子がどんどん出てきているなぁと感じました。



東京都は毎年のように高学年・低学年共にトップクラスの選手を代表として出していますが、今年も層が厚い印象を受けました。
午前の部が終わり、午後のトーナメント戦まで昼食休憩です。
私は東京支部連合会様よりお弁当を頂戴しました。





お弁当を美味しくいただきました。
東京支部連合会様には感謝です。
決勝トーナメント


お昼休憩を終えて、午後の決勝トーナメントが始まります。
低学年の部は12時から、高学年の部は12時15分よりスタートしました。
低学年の部


低学年の部は、33名が二つのトーナメントに分かれ、倉敷王将戦全国大会の切符を争います。
優勝するには4連勝が必要です。
午後からは保護者の方も会場に入り、勝負の行方を見守っていました。






低学年の部は進行が早く、1時間後の13時には二つの決勝戦が始まりました。
決勝戦のカードは次の通りです。
小町 知幸(3年)ー 高城 敏太郎(2年)
平田 晃史(3年)ー 石津 遙真(1年)
3年生対2年生、3年生対1年生の決勝戦でしたが、共に3年生の小町君、平田君が勝利し、倉敷王将戦全国大会の切符を掴みました。
決勝戦を少し観戦しましたが、3年生らしく小町君も平田君も落ち着いた将棋を指していました。
東京都の低学年代表は、2年前に在國寺君が全国準優勝、昨年は宮野君が全国3位と活躍していたように、毎年のように上位に入り込んでいる印象があります。
66名の激戦区を突破したことを自信にして、全国大会でもぜひ活躍してほしいと思います。


東京都低学年の部代表


東京都低学年の部代表
高城君(2年生)、石津君(1年生)は惜しくも決勝で敗れてしまいましたが、来年も低学年の部で参加できるので、さらに実力をつけてまた挑戦してほしいと思います。


惜しくも決勝で敗れた


1年生なので将来が楽しみ
高学年の部
高学年の部は、56名が午前の予選を突破し、午後の決勝トーナメントを争います。
12時15分に午後の決勝トーナメントが始まりました。




決勝トーナメント開始から約2時間。
決勝戦に進出した4名が出揃いました。
高津 礼音(6年)ー 白尾 康(5年)
赤梅 良太(5年)ー 井上 新太(5年)


左:白尾君、右:高津君
激戦の決勝戦でしたが、高津君と赤梅君が勝利し、倉敷王将戦東京都代表の座を掴みました。
高津君は関東研修会C1に在籍しており、公文杯小学生将棋名人戦でも東京多摩地区代表となり、東日本大会でも活躍した実力者。
決勝戦は苦しい局面を粘って、逆転に成功しました。
全国大会でも十分上位に進出できる力があるので、活躍を楽しみにしています。


東京都高学年の部代表
赤梅君も同じく関東研修会C1の実力者で、11月のテーブルマーク関東大会では、当時4年生ながら高学年の部で見事優勝を飾っています。
本大会は予選で一敗したものの、その後見事立て直して優勝されました。
過去に名古屋城王位戦で学年優勝の経験もされていますが、都代表としての出場は初めてかと思われます。
実力は十分なので、全国大会での上位進出を期待しています。


東京都高学年の部代表



高津君、赤梅君共に全国大会でも実力十分。
全国優勝目指して頑張ってほしいと思います。
厳しい東京都大会で決勝戦まで進みながら惜しくも敗退した白尾君、井上君も立派な成績です。
白尾君は2年連続の都代表を逃してしまいましたが、実力は全国小学生の中でもトップクラス。
関東研修会でもB1まで上がり、どんどん強くなっています。
この悔しさをバネにさらなる高みを目指してほしいと思います。


実力は間違いなく全国トップクラス
井上君はこの厳しい東京都大会で見事決勝まで進出しました。
関東圏のこども将棋大会にはよく出場されているようで、下のクラスでは何度か優勝もされています。
まだ5年生なので、次は代表を目指して頑張ってほしいと思います。


厳しい東京都大会で決勝進出は見事
交流戦
東京都大会では、予選や決勝トーナメント敗退者のために、交流戦も用意されていました。
将棋を指したい子供達は、午後も将棋を楽しむことができます。













閉会式の直前まで将棋を指している子もいました。
折角なので、たくさん将棋を指したいものですね。
表彰式・後片付け
表彰式
決勝戦が終わり、表彰式です。
高学年の部・低学年の部共に上位4名が表彰されました。
優勝者には、トロフィーと棋書が贈られます。


低学年の部優勝の平田君


低学年の部優勝の小町君


低学年の部準優勝の石津君


低学年の部準優勝の高城君


高学年の部優勝の赤梅君


高学年の部優勝の高津君


高学年の部準優勝の井上君


高学年の部準優勝の白尾君
最終結果は東京都連のHPにも掲載されています。
後片付け
後片付けは高学年の部決勝戦が始まる頃からスタートしました。
県連スタッフが手分けして、駒や時計を片付けていきます。


低学年の部は14時30分頃には綺麗に片付けが終了しました。


会場全体は、15時15分頃に片付けを完了しました。
会場退出は15時20分頃でした。
第24回全国小学生倉敷王将戦 東京都大会 あとがき


2025年5月6日(火・祝)に開催されました第24回全国倉敷王将戦/東京都大会の大会を朝の準備から退場まで取材・観戦させていただきました。
大会は過去最高の178名の参加者でした。
東京都は各地に将棋教室が充実しており、また千駄ヶ谷の連盟道場に通いやすいこともあって、子供の将棋人口が多く、大会参加者増につながっています。
将棋人口が多い分トップ層のレベルも高く、高学年の部は各地こども将棋大会で実績ある子供たちが数多くいました。
また低学年の部も初段以上の棋力を持っている子が何人もいて、こちらも全国トップクラスの層の厚さを感じました。
本大会で優勝した四名は激戦の東京都大会を勝ち抜いたことを自信にして、全国大会でもぜひ活躍してほしいと思います。
本大会は親御さんも含めると400名近くが会場に来場されていたかと思います。
これだけの参加者がいたにも関わらず、大会は準備段階から開会式、予選、昼食、決勝トーナメント、表彰式までつつがなく進行し、トラブルが起きることなく盛況に終えることができました。
主催した東京都支部連合会は、事前に運営マニュアルを作成しており、スタッフの役割やスケジュールを明確にしていました。
周到な事前準備もあり、大会当日も各スタッフが横の連携も欠かさずに自分の役割を着実にこなせたことが、大会の成功につながったように思います。
私が感じた本大会の良かった点をまとめました。
- 事前に運営マニュアルを作成し、スタッフ全員が持ち回りとやるべき事を理解されており、連携力が抜群だった。
- 事前申し込み制を採用しており、参加人数に合わせた運営の準備を徹底していた。
- 会場別室に保護者控室を用意していた。保護者は控室でゆっくり休むことができる。
- 早期敗退者のために交流戦を用意しており、参加した子供達が一日将棋大会を楽しめる工夫がされていた。
- 対局カードやトーナメント表を用意しており、予選と交流戦は対局カードを中心に、決勝トーナメントはトーナメント表を中心に手合いをつけていた。
- 交流戦にも賞品のお菓子が用意されており、子供達の参加意欲を上げていた。
本大会の基本方針は、『参加した子どもたちが、安全に、最後まで楽しめる大会にする』でした。
私が一日本大会を取材して感じたのは、まさにこの方針が最初から最後まで意識されており、参加した子どもたち全員が最後まで本大会を楽しめたのではないでしょうか。
本大会を取材したのは、2年ぶり2回目となります。
前回もそうでしたが、東京都支部連合会の北会長始めスタッフの皆様には今回も温かく迎えていただき、気持ちよく取材をさせていただきました。
東京都支部連合会の皆様には一日大変お世話になり、ありがとうございました。


最後に、東京都支部連合会の皆様や当日会話した子供達や親将さんなど関わった全ての方達に感謝を申し上げて、この記事を終えたいと思います。(みなさん、ありがとうございました!)



赤梅君、高津君、平田君、小町君、全国大会でも頑張ってくださいね。




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