1月28日茨城県日立市で開催された公文杯第49回小学生将棋名人戦の茨城県大会を観戦・取材させていただきました。
会場の準備から片付けまでの茨城県大会の一日を追いましたので、その模様を報告します。
- 公文杯小学生将棋名人戦/茨城県大会の模様
- 長男(高3)と次男(中2)を持つ親将(親将歴12年)
- 日本将棋連盟茨城常南支部役員 広報部長
- 千駄ヶ谷連盟道場初段、将棋ウォーズ二段
- 2022年11月から「こども将棋情報室」のサイトを運営
本記事に使用している写真は開会式時にご案内した通りモザイクなどの加工処理なしで掲載しています。
もし不都合のある方がおられましたら、最下部にある「お問い合わせ」よりご連絡ください。
公文杯小学生将棋名人戦 茨城県大会
小学生将棋名人戦は、日本将棋連盟主催で開催される小学生将棋の最高位を決める大会です。
1976年の第1回大会から続き今年で49回目。
第47回大会から株式会社公文教育研究会が協賛しており、「公文杯」の冠がついた大会になっています。
まず各都道府県大会で予選会が開催され、各県代表者が東日本大会と西日本大会に分かれた全国大会に参加します。
東日本大会と西日本大会を勝ち抜いた4名が最後に東京での決勝大会に参加し、優勝者から3位までを決めるという仕組みです。
決勝大会はNHKでテレビ放映があり、小学生の子供達にとっては憧れの舞台です。
茨城県では第9回大会(1984年)で現在プロ棋士の窪田七段が全国優勝されています。
また、第40回大会(2015年)と第41回大会(2016年)では、2年連続で正道直さんが準優勝されています。
正道直さんは、全国小学生倉敷王将戦でも、低学年の部(2013年)と高学年の部(2016年)で全国優勝されています。茨城県大会はもちろん全国大会でもすさまじい活躍でした。
受付まで
道中
2024年1月28日(日)の大会当日、茨城県内の天候は晴れ。
気温は相変わらず低いですが、風もなく穏やかな一日となりました。
会場は茨城県北部の日立市のマーブルホール。県南の我が家からは高速道路を使って1時間半ほどの距離です。
距離はそこそこありますが、会場は高速を降りて5分ほどなので、比較的行きやすい場所にあります。
私は6時半に自宅を出発。
道中、普段お世話になっているAさん宅に寄って、大会に参加するB君とご家族を乗せて日立まで向かいました。
道中はB君やご家族と会話しながらだったので、日立まであっという間でした。
B君は道中「C君には勝てない。当たりたくないなぁ。」と言っていましたが、私から「前回負けたけど互角の将棋を指せたし、将棋はわからないよ。」とアドバイスしておきました。
B君とこのような会話をしながら、私も以前息子と会場に向かう時は色々会話していたことを思い出しました。
前回大会のこと、会場のこと、ルールのこと、ライバルのことなど、私なりにアドバイスなどもしていました。
こうやって息子と会話しながら会場までの道中も楽しかったですね。
途中コンビニでの休憩も挟みながら8時半に現地に到着。
日立シビックセンターの地下駐車場に車を停めました。
会場のマーブルホールは日立シビックセンターに隣接しています。
日立シビックセンターの地下駐車場は広くて十分なスペースがあるので、駐車には困りません。
駐車場料金は朝8時半から16時までで1200円でした。
駐車場で少し待機した後、9時前に会場のマーブルホールに入りました。
受付準備
会場内では大会の主催者である日本将棋連盟日立支部のスタッフの方々が会場の設営と受付の準備をされていました。
みなさん将棋会場の設営には慣れているようで、またたく間に会場が出来上がっていきます。
茨城県大会は事前申し込み制なので、参加人数は把握できています。
参加者30人強分の対局席、将棋盤、駒、対局時計、保護者席を準備していきます。
本日の対局は、全体局で対局時計を使用します。
対局時計の設定も手分けして行いました。
対局時計の設定ができる人が多いと助かりますね。
ものの15分ほどで会場の準備が整ってきました。
受付
予定通り9時15分に受付を開始しました。
参加者は参加票に名前や学校名などを記載し、参加費(1,500円)と合わせて受付に提出します。
続々と本日の参加者と親御さんが来場されます。
受付では予選リーグのクジを引いて、事前に用意していた名札と参加賞を受け取ります。
名札は首に掛けるものです。
運営側も名前と顔が瞬時に一致できるので、便利です。
昨年同様、大会に参加したお子さんに参加賞と名札の写真を撮らせていただきました。
受付を終えた子ども達の中には練習将棋を始める子もいます。
そして、その周りに他の子供達が集まってきます。
こども将棋大会あるあるの光景ですね。
本日の会場には、土浦将棋塾の熊谷先生や南守谷将棋センターこども将棋教室の辻先生など各教室の先生方も生徒さんの応援に来られていました。
普段通っている教室の先生が応援に来られると子供さんにとっても心強いですね。
10時前に全ての受付と予選リーグの抽選を終えました。
今年の茨城県大会の参加者は33名でした。(昨年度34名)
午前の部(開会式、予選リーグ)
開会式
9時55分より開会式が始まりました。
主催者日立支部の矢代支部長と茨城県支部連合会斉藤副会長のご挨拶から始まり、美馬審判長のルール説明がありました。
茨城県大会の大会方式は下記の通りです。
- 全対局に対局時計を使用(持ち時間15分、切れたら1手30秒未満)
- 全参加者で4人1組の予選リーグ(2~3対局)を実施し、クラス分けを行う。
- 2勝および2勝1敗:A級(公文杯代表戦決勝トーナメント)
- 1勝:B級(スイス式4回戦)
- 0勝:C級(スイス式4回戦)
予選リーグで敗退しても、クラスを分けての4回戦があるので、一日将棋を楽しめるシステムになっています。
最後に、将棋靴下の「将ックス」を扱う伊藤さんからも将ックスについての宣伝がありました。
今回も大会優勝賞品として「将ックス」を寄贈いただきました。
本日来場された塚田九段にも「将ックス」をプレゼントされたとのことです。
その将ックスについて、塚田恵梨花女流二段もXでポストされていましたので、ご紹介します。
私も開会式時にご挨拶させていただきました。
本大会の観戦記事を書くこと、写真を使用させていただくことをご説明させていただきました。
予選リーグ
開会式を終えて、10時20分より対局が始まりました。
4人×9組(3組は3人)のリーグ戦。
2勝通過者はA級の代表決定トーナメントへ、1勝者はB級、0勝者はC級に入ることになります。
1勝1敗になった場合は、隣の組の1勝1敗者と対局することになります。
対局を終えた子ども達は受付に勝敗の報告に行き、受付で次の組み合わせをどんどん決めていきます。
保護者の方は対局場周りに設置した椅子でそれぞれ過ごしています。
対局を終えたお子さんが親御さんに勝敗を報告に行かれ、親子で一喜一憂されている姿があちこちで見られました。
保護者の方は、それぞれお子さんの対局を見守ったり、談笑したり、スマホやPCを見るなど様々です。
会場内の壁には子供達や親御さんを飽きさせないように、いくつかの棋譜も掲示されていました。
過去の茨城県大会決勝戦の棋譜3つと少年時代の戸辺誠七段(茨城県代表・5年生)VS中村太地八段(東京代表・3年生)の対局棋譜を貼ってあり、多くの親御さんや子供達が鑑賞されていました。
予選リーグは完全なクジで決めているので、強豪同士が同じリーグに入るなど各地で熱戦が繰り広げられていました。
特に1勝1敗者の決勝トーナメントをかける最後の対局は大熱戦でギャラリーも固唾をのんで対局を見守りました。
予選リーグを突破した子供達は決勝トーナメントの抽選を行い、昼食休憩に入ります。
12時10分頃に予選リーグの全対局が終了し、午後の部のA級、B級、C級の3部門に振り分けられました。
午後の部はA級(代表決定トーナメント戦)、B級(スイス式4回戦)、C級(スイス式4回戦)が行われます。
予選リーグから熱戦が多かったです。
道中一緒だったB君は、予選リーグの初戦で当たりたくないと言っていたC君と当たってしまいました。
棋力差は相当あるので厳しいかなとは思っていましたが、なんと勝っていました。
また次の対局も前回道場で負けた相手とのことでしたが、それも勝って2連勝で予選通過。
パパさんのお話では最近めっきり将棋を指す機会が減ってしまったそうですが、今回の活躍で自信を取り戻してまた頑張ってほしいですね。
塚田九段の来場
11時半に日本将棋連盟から塚田九段が来場され、子供達を前にご挨拶をされました。
塚田九段は昼食休憩を挟んで午前から午後の閉会まで計24名に指導対局をいただき、6面指しの会場は大いににぎわっておりました。
遠方の日立まで来ていただき、ありがとうございました。
昼食休憩
予選リーグを終えた子ども達はお昼休憩に入ります。
茨城県大会は参加費に昼食代が含まれており、お弁当とお茶が配布されます。
保護者と子供達は会場内外それぞれの場所で昼食を取ります。
この日は天気がよく暖かかったので、外でのんびり食事をされる子供達も多かったです。
食事を終えた子ども達の何人かは会場外の広場でボール遊びに興じています。
対局合間の休憩時間とは言え、体を動かしたい盛りで元気ですね。
午後の部
12時45分となり、午後の部が始まります。
A級(決勝トーナメントの部)、B級の部とC級の部と3つに分かれて大会は進行します。
C級
C級は7名が参加。
スイス式4回戦です。
初級者から中級者が多く、将棋を楽しんで指してほしいクラスです。
みなさん対局時計も堂々と使いながら、4対局最後まで一生懸命指してくれました。
4対局の結果、全勝の池田君が優勝、3勝の来住君が2位。
2勝者は3人が並びましたが得点差で山本君が3位となりました。
優勝 池田礼緯 つくば市竹園西小学校2年
2位 来住侑龍 神栖市立横瀬小学校5年
3位 山本伊吹 日立市立田尻小学校4年
入賞できなかった子達も最後までよく頑張りました。
B級
B級は8名が参加。
C級同様にスイス式4回戦で進行が始まりました。
中級者の部のB級とは言え、惜しくも決勝トーナメント戦に入れなかった強豪も含まれており、レベルの高い将棋が繰り広げられていました。
4対局の結果、全勝が出ずに3勝1敗者が3人並ぶ大混戦となりました。
得点差で天野君が優勝、三谷君が二位、来住君が三位となりました。
優勝 天野遥貴 江戸川学園取手小学校5年
2位 三谷修司 つくば市立桜南小学校4年
3位 来住隼佑 神栖市立横瀬小学校3年
A級決勝トーナメント戦
A級は、予選リーグを2勝して勝ち上がった18名の完全トーナメント戦。
1位~6位までの順位を決めていきます。
決勝トーナメント1回戦で兄弟対決がありました。
最後の公文杯に挑む5年生君と低学年で数々のタイトルを獲得してきた3年生君の対決。
5年生兄君も実力者で予選は2連勝でなんなく通過。
決勝戦で当たってもおかしくない実力者同士ですが、まさかこの場で当たるとは。
大会前に兄君は弟の優勝は見たくないと言っており、この対局には相当気合いが入っていたように思います。
私も2人の息子がおり、弟の方が強くなって兄を抜いていったことを思い出し、2人の対局の行方を見守っていました。
結果は、弟君の勝ち。
崩れるように号泣している兄君を見て、私ももらい泣きしそうでした。
同じ時期に兄弟で将棋を始めて、徐々に自分より強くなっていく弟君を間近に見ながら悔しい気持ちがあったように思います。
すでに全国でも通用するぐらいの弟君に果敢に挑んでいった兄君、その兄君のプレッシャーを跳ね返した弟君、この両者に心の中で拍手を送りました。
ベスト4
トーナメント戦は進行していき、2時過ぎには準決勝に臨むベスト4が出揃いました。
準決勝から、対局に邪魔が入らないように対局席を区分けします。
準決勝に進出した4名をここで紹介します。
高森勇吹君(4年)
高森君は鹿島市在住で、周りに将棋教室や大会が少ない環境でありながら、千葉県柏市の柏将棋センターまで足を運び、ここ2年ほどで急速に力をつけてきました。
おそらく上位4人の中では一番と言っていいほど関東内の主要子供大会に参加しています。
本人の将棋に対する熱はもちろんのこと、遠方ながら息子さんを各教室や大会会場まで引率されている親御さんのサポートも素晴らしいです。
池本明良君(2年)
池本君はひたちなか在住で、今回は5年生のお兄さん柳之介君との参加です。
2023年度文部科学大臣杯小学生団体戦の茨城県代表のメンバーで、東日本大会でも活躍しています。
昨年の全国小学生倉敷王将戦の茨城県大会低学年の部では3位に入る実力者で、今回は2年生ながらベスト4まで勝ち上がってきました。
井ノ江蒼馬君(5年)
井ノ江君はつくば市在住で関東研修会E1の実力者です。
ベスト8で前述の池本柳之介君に大逆転で勝ち、ベスト4に進出しました。
土浦将棋塾で基礎を学び、今では南守谷将棋センターや関東研修会でも腕を磨いています。
中村清之介君(3年)
中村清之介君(取手市)は、低学年のタイトルは全て獲得したと言ってもいいほどの実績を持つ3年生です。
予選リーグ初戦で一敗したものの、その後は危なげなく勝ち上がってきました。
数々の大人アマ強豪にも勝ってきており、3年生ながらすでに小学生全国レベルの棋力を持っています。
準決勝からは各対局の棋譜も取り、好局については後の茨城新聞にも掲載されることになります。
熱戦の結果、中村君と池本君が勝利して決勝を戦うことになりました。
3年生対2年生の決勝戦です。
会場内では入賞者の賞品の準備もされていました。
優勝者には盾と賞品が送られます。
決勝戦・三位決定戦
決勝戦と三位決定戦は3時前に始まりました。
決勝戦は低学年同士の対局もあって早い展開で15分ほどで終局となりました。
勝利したのは3年生の中村君。
中村君は2023年全国小学生倉敷王将戦(低学年の部)で全国優勝を果たしています。
昨年のテーブルマーク関東大会低学年の部でも優勝しており、低学年の枠内では数々のタイトルを獲ってきました。
小学生枠の中では初めての全国大会ですが、その棋力は高学年の中に入っても遜色ありません。
過去に渡辺明九段や佐々木勇気八段が成し遂げた新4年生での全国制覇を目指してほしいと思います。
惜しくも準優勝だった池本明良君はまだ2年生。
親御さんに話を聞くと、兄の柳之介君は努力家で弟の明良君は才能型とのこと。
明良君はこの結果に慢心せず、お兄さんの柳之助君のように日々努力して更なる高みを目指してほしいと思います。
3位決定戦は井ノ江君が勝利。
別枠で行われた5位決定戦は池本柳之介君が岡田君に勝利して5位となりました。
A級決勝トーナメントの部の最終結果は下記の通りです。
優勝 中村清之介 取手市宮和田小学校3年
2位 池本 明良 ひたちなか市立外野小学校2年
3位 井ノ江蒼馬 つくば市立学園の森義務教育学校5年
4位 高森 勇吹 鹿島市立波野小学校4年
5位 池本柳之介 ひたちなか市立外野小学校5年
6位 岡田 勲門 ひたちなか市立外野小学校3年
2023年の文部科学大臣杯団体戦の茨城県代表外野小学校のメンバー3人全員が6位までに入賞しました。
2024年度の団体戦も楽しみです。
閉会式
15時40分より閉会式が行われ、入賞者の表彰が行われました。
A級からC級までの表彰が行われ、多くの参加者が最後まで残って表彰式を見守りました。
A級優勝の中村君から、C級3位の山本君までが入賞となり、それぞれに表彰状や賞品が手渡されます。
表彰式の後には塚田九段より閉会のご挨拶をいただきました。
最後はA級からC級までの入賞者全員での記念撮影。(おめでとうございます!)
たくさんの方が最後の表彰式まで残っていただき、入賞者に盛大な拍手を送っていただきました。
大会は15時50分に終了となりました。
本会場は業者の清掃が入るため、会場内の片付けはいらなかったのですが、簡単に会場内を整理して会場を後にしました。
外はすでに夕方の空模様。
関係者一同無事大会を終えて、やり切った感がありました。
第49回公文杯小学生将棋名人戦 茨城県大会あとがき
第49回公文杯小学生将棋名人戦/茨城県大会を一日観戦・取材をさせていただきましたが、子供達は一同将棋に集中しており、会場内では騒いだり走り回ったりする子もおらず、またトラブルが発生することもなく、とてもいい将棋大会だったように思います。
本大会を主催いただいた日立支部のスタッフは矢代支部長を中心にまとまっており、大会進行はスムーズに進行していきました。
本大会で良かった点を下記記載します。
- 大会進行がスムーズ(支部長と受付スタッフの段取りと連携が良かった)
- 午前の予選リーグでクラス分けがあり、午後の対局も参加できる(全対局者が一日楽しめるシステム)
- 参加者は昼食が付いている。
- 昼食は会場内でも会場外でも取ることができ、場所に困らない。
- ストラップ付きで参加者の名札を用意しており、顔と名前が一致できる。
- ホワイトボードや壁に過去の大会棋譜が掲示され、鑑賞を楽しむことができる
- 準決勝以降は、対局席を隔離した(対局者が将棋に集中できる)
- 敗退後でも塚田九段の指導対局を受けることができる
- 対局席の周りに多くの座席を設置しており、保護者は会場内で休むことができる
- 会場内は自由に回ることができるため、子ども達の将棋を観戦できる (ただし観戦ルールあり)
- 大会結果がすぐに茨城支部連合会のHPに掲載される
スタッフの方に聞くと、事前準備はほとんど矢代支部長が対応されたとのこと。
参加者名簿の作成、名札の準備、会場や昼食の手配など事前準備も大変だったかと思います。
本大会の一番の功労者は矢代支部長のように思います。本当にお疲れ様でした。
またその矢代支部長を支える日立支部のスタッフの方々も、会場設営、時計設定、受付対応、大会進行などテキパキと協力しながら対応をされていました。
最後に事前準備から本大会を裏方で支え、大会を成功裏に収めた日立支部のスタッフさんをクローズアップして、本記事を終えたいと思います。日立支部の皆さん、ありがとうございました。
日立支部では大会運営にご協力いただける親御さんを随時募集しています。
よりいい大会運営ができるようにご協力いただく方がいらっしゃれば幸いです。
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